多くの人が待ちわびた2020年は未知の感染症が世界中に広がり、日常が変化した。
ハッキリ言って、“楽しくなかった”というのがストレートな感想だと思う。
特にポルノファンにとって、2018年~2019年はポルノ20周年イヤーという事もあり盛り上がりは最高潮。毎日が楽しかったという人も多いはずで、その反動もあり、2020年は一気にクールダウンしてしまった。
2020年がまさかこんなことになるなんて誰が思っていただろうか。
しかし、待っていた分だけ感動は深まるもの
2020年は、この日の為にあった。
【ライブレポ】大好きな音楽と再会した日“CYBERロマンスポルノ’20 ~REUNION~”
ライブ開催への想い
2020年9月8日に配信ライブ開催の発表がされた際には、12月がとても先の様に感じた。しかし、あっという間にその日はやってきた。

今回のライブはポルノにとって思い出深い場所である渋谷公会堂(現、LINE CUBE SHIBUYA)での公演だった。現地で観覧するチケットはファンクラブ限定であることと、新型コロナウイルスの感染予防対策ガイドラインに沿って動員数は約半数。
これまでにない激戦となったチケット抽選だったが、私は応募しなかった。
本心を言えば本当に観たかった。しかし、現在の東京の感染者数や行くことに対しての周りの目だったりを考えると正しいことなのか間違っている事なのかもわからない。
なによりもこの状況で妻を置いて東京にライブに行くということが自分には出来なかった。
SNS上で当選者が喜びの声をあげているのを見て、本来なら悔しくて仕方なかったはずだが、今回に関しては全くその感情が出なかった。その大きな理由の一つが、ポルノがチケット販売の際に記していた一文
- PLACE:Wherever you like
「ライブを見る場所は、どこでも好きな場所」というメッセージにより、どこにいても平等に届けてくれるという安心感を与えてくれた。
昨年の2019年、日本で一番有名なイベント会場といっても良い東京ドームを二日間も満員にしたベテランバンドが次に行ったライブは、これまでにない最小規模のライブ。
しかし、オンラインで繋がっている。私もその一人として精一杯盛り上げたい気持ちでいっぱいになりながら当日の配信を待った。
ファンクラブ限定ライブ前配信
ライブ配信は19時からだったが、18時40分頃からファンクラブチケット購入者限定でライブ前配信が行われる予定となっていた。
なんとか仕事を終わらせて帰宅し、ポップコーンを弾けさせながら笑う妻と共にライブの開始を待つ。配信前からログインすると画面に映し出されているのはグッズ情報と、ライブに関しての注意事項だった。
いらすとやの画像を使用し、ユニークに配信ライブに関しての注意事項を伝える。
- ライブ中の飲食は全てOK(未成年やドライバーの飲酒はNG)
- まわりの人、近所の人に迷惑をかけないこと
- 間違っても大きな声で「ポルノ~」と叫ばないこと
また、今回は珍しく画面の写真撮影がOK、そしてSNSに投稿可能という措置が取られた。おかげてSNS上は非常ににぎやかなものとなっていた。
ライブ前配信の映像は9月8日のライブ発表時のインタビューから始まった。そして未公開のリハーサルの映像が映し出される中、プロジェクトの一環として今回初のAR演出を行うための撮影の様子も公開された。
\プレスリリース/
ポルノグラフィティ初となる 配信ライブ “CYBERロマンスポルノ’20 ~REUNION~”のAR演出・制作を担当いたしました。
当社CyberHuman Productions、6秒企画が企画・制作し、高精細3Dスキャン技術や、参加型ライブ施策を盛り込んだAR演出によるライブです。https://t.co/tf9HUcu7Ka pic.twitter.com/7ZEWbMWulM— サイバーエージェント 広報&IR担当 (@CyberAgent_PR) December 2, 2020
時代に乗り遅れず、新しい姿を見せてくれる二人はさらに若返ったように感じる。
リハの合間に二人へのインタビューも行われ、現在の心境を聴くことが出来た。
まずはボーカル昭仁。
今回のライブに合わせて昭仁は髪を染め直しており、アンフェの時のような金が混ざった髪色になっていた。個人的には黒髪が好きだがこれはこれでかっこいい。
今回、メンバーのスケジュールの関係で普段よりリハが少ないということだったが、トータル9回のリハを終えたポルノは、手ごたえを感じている様だった。
前回のライブから1年3か月、これまでにない期間が開いたことへの不安を口にする場面もありながら、この期間にパワーアップした部分は?という問いに対して「歌が良くなった」と自ら答えた。
昭仁の歌の進化は毎年のように感じている。特に昨年までの20周年イヤーは歌唱力の向上が顕著に表れていたが、実質的に休止期間となった2020年も、自身の配信するYouTube番組で進化する歌声を披露していた。
やっと“ポルノグラフィティ”というホームでその歌声の進化を感じることが出来る喜びがもうすぐやってくる。
晴一がインタビューで答えたのは、この一年間私たちと同じようにコロナを恐れたり不安を感じた中から急にポルノへのスイッチが入らないが、今回は観客がいるという事でスイッチが入るだろうという事だった。
常にプロ意識の塊のように見える晴一でも一歩ポルノという服を脱げば私たちと同じ人間なんだという当たり前のことを再認識しながら、一音楽人としてコロナに怯え不安を感じている私たちにエンターテインメントを届けようとしてくれる熱い想いも感じる。
リハーサルの映像は当日の会場入りする様子に切り替わり、準備運動として施設内を走り始めた昭仁が会場入り口までやってきたところでリアルタイム映像に切り替わった。目線は変わらず、まるで昭仁が観客として入場するかのように消毒やチケットチェックを終える。
顔は映らないが、手を見ると昭仁ではないことが分かった。すると妻が、「もしかしてnang-changじゃない?」と言った。事前に昭仁の口から今回、nang-changは違う形でライブに参加してもらうという話をしていたこともあり、まだ確定はしていないものの、まさかの演出に驚いた。
入場した人物がホールに入る前に印象的だったのは、エスカレーターを除菌し続けているスタッフの姿。今日という日を作り上げようとしているのはポルノだけではない。皆さんの力で私たちは最高の時間を過ごさせて頂ける。
そして、開演時間となった。
待ちわびた、最高の時間がやってきた。
“CYBERロマンスポルノ’20 ~REUNION~”
会場が暗転し、拍手が起きる。画面の前では会場にいるつもりで拍手をした。
拍手と共に会場に響き渡るのは聴きなれないメロディと昭仁の歌声
REUNION NOW
REUNION START....
このライブの為のオープニングSEなのだろうか?胸が高鳴る。
モニターには複数のパターンで「REUNION」の文字が残像の様に流れていく。そして時おり流れる“CYBER ROMANCE PORNO’20の文字と共に、映画などでよく聞くようなイメージ通りのロボットの声がタイトルを告げる。
どんどん大きくなる手拍子。雰囲気的には、10周年アリーナツアー「ロイヤル ストレート フラッシュ」に近いものを感じる。
足下にスモークが焚かれるなか、登場する見覚えのあるシルエット。もう幻想ではなく、確かにそこに彼らがいた。あのドーム以来、ずっと待っていた姿だ。
会場にはいないが、同じ空間にいる気がする。同じように画面を見て、同じように想っている仲間がたくさんいるはずだ。
そして大好きな歌声が響き渡った。それと同時にモニターには、レトロなパソコンでタイプしたように文字が打ち込まれていく。
僕らが生まれてきて
半世紀後の世界
サイバー空間で
あなたとつながりたい
デビュー曲「アポロ」の冒頭を今回のライブの為に歌詞変更し、すべてのファンをサイバー空間の中に生み出された特設会場へ導いた。
あとから妻が、「いきなり歌詞間違えたかと思った。」と語っていたが、昭仁ならそれは十分あり得るのが怖い。演出で良かった。
アポロの演奏が始まり、会場が少し明るくなる。動員数の制限で一席飛ばして手拍子をしているファンを見ると、少ない人数ながらまるで満員かのような盛り上がりを見せている。
昭仁の歌は立ち上がりから絶好調で、1年3か月のブランクを全く感じさせない。やはりリハもあるが、休止期間から今日までにボーカリストとしての鍛錬を続けてきた証だ。
間奏で昭仁が「Everybody!会いたかったぜ!!」と叫ぶ。ファンがポルノを待ち望んでいたように、ポルノもこうしてファンと再会する日を待ちわびていたのだろう。
晴一のギターの音も心地いい。Abemaで放送された前夜祭では、Official髭男dismのギター大輔が晴一と食事した際の話を紹介していた。その中で、晴一が「上手なギタリストは世界に沢山いるかもしれないけれど、アポロをファンに届けるなら自分が弾くしかない」と語っていたことを明かした。
またさらに進化したアポロが聴けたのは、昭仁の歌声だけではなく晴一のギターがあってこそだった。
開幕からいきなり最高潮かのような盛り上がりを見せたポルノは2曲目にお得意のラテンナンバーを持ってきた。近年のポルノの代表曲であり、イントロのギターが鳴ると同時に肌を焦がすような熱気を感じる名曲
- オー!リバル
「オー!リバル」では少し音響トラブルがあり音が小さくなる場面があった。これは配信組だけだろうか?
そんなトラブルに気を取られている中、後ろのモニターを見るとサイが走っていた。リバルの収録されたアルバム「RHINOCEROS」は、“3さい”がテーマになっていた。まさか今回のREUNION(再会)・・・サイ会?
そんなダジャレを匂わすかたわら、サイ高(最高)に興奮する演出があった。今回のライブで目玉となるARを使った演出はモニターからいろんなものが飛び出し、まるでライブ会場の中を動き回り、飛び回る様な状況を作り出すものだった。
モニター内で走り回っていたサイが突進し、スクリーンが割れる映像が流れるとステージ上空にサイが現れた。もちろんこれは配信組にしか体感できない映像になっている。
サイだけではなく、PVを模した映像では二人がモニター上の二人が演奏し、歌いながら歩いて飛び出してくる。まさに2020年だからこそできるライブといった感じだ。
ポルノはボーカル自体にパワーのあるバンドなので、派手な演出をしなくてもライブが華やかなものとなるが、こういった演出も出来るから素晴らしい。
「オレオレ」の掛け声の部分では、昭仁が会場のファンに対し、「気持ちで歌ってくれ」と伝え、配信組には「デカい声で歌うんだ」と言った。恥ずかしがらずにテレビの前で歌うことが出来たのはこの配信を見ているのが自分だけではないから。横にいる妻や、全国・全世界の仲間がいるから。
届くと信じて声を出す。声は出せなくても会場にいるファンの手拍子や、手を振る姿から燃えるような熱さが伝わってくる。そしてとどめにサイが火を吹き、会場のみんなが燃えた。
3曲目のイントロでは、久しぶりの演奏に嬉しくなり思わず声をあげてしまった。
- 星球
この楽曲は、いまやポルノのシングルをリリースする際に期待が高まってしまう組み合わせ(作詞:新藤晴一、作曲:岡野昭仁)で制作されている。
記憶ではアルバムツアーでやって以来、演奏が無かったので久々に演奏を聴くとやはりライブ映えする一曲であることがわかる。
Song for you あなたがたゆたえるほどのテンポで
時計の針は緩めておいた
汗ばむBoys & Girls フロアが熱くなってゆく
踊ろう騒ごう今夜ヒロイン
夢にまで見た時間、ずっと終わって欲しくないと毎回思う。特に今回は本当に思う。
蓄音機やミラーボールが飛び回るAR演出が夢の世界のようだ。
例えばここが気に入って帰りたくないと言って
DJを困らせるかもしれない
もし、ファンが願うならずっと歌い続けてくれますか?
ここでMCに入る。会場の明かりがつき、拍手が鳴りやまないファンに向け、昭仁が「声が出せんのよね」とぽつり。
そして、「でも、伝わってきている」と言ってくれた。
何を話しても拍手で答えるしかないなか、トークを繰り広げる二人。この感じが懐かしい。
今回のライブが雨のライブみたいにスペシャルかはわからないけど、何年か経ったらそんなこともあったなぁって思い出に残るライブになると思う。
そう晴一は語った。
同じ時間に盛り上がっている同志がいる。
会場のみんなは魂込めた生涯最高の手拍子・拍手を、配信のみんなは我慢している会場のみんなの気持ちをくんで、盛り上がって満喫して欲しい。
昭仁もこの形のライブをポジティブにとらえるように伝えた。さらに昭仁らしい言葉で
でっかい声で歌って、近所迷惑になろうがいい。わしは知らん、責任取らんぞ。
大きな声を出してたら隣の部屋に同志がおったみたいな話もあるかもしれない。そういうのが繋がって繋がってひとつになるんです。
なんとも豪快な煽りだ。ライブ前に近所迷惑にならない様にと注意事項があったのを完全無視。でも、それくらい盛り上がりたい気持ちはみんながもっている。
だって1年3か月ぶりのライブだから。本当に嬉しいから。
ネガティブをポジティブに変え、新しいエンターテイメントを今日から作る。
最後にそう宣言し、次の曲へ移った。
キャッチーなメロディに乗せ、力強い昭仁の歌声が響き渡る。
- ワンモアタイム
今回のライブは、コロナ禍というかつてない状況の中で開催されたライブだが、2011年に静岡県のつま恋で行われた「つま恋ロマンスポルノ'11 〜ポルノ丸〜」に通ずるものを感じる。
ポルノ丸は、東日本大震災の復興支援として開催されたライブで、みんなを元気づけようとする気持ちが込められたポジティブソング多めのセットリストだった。
当時の最新曲として披露された「ワンモアタイム」は未来を信じ、前を向き進んでいこうという思いが込められた楽曲で、歌詞だけでなくキャッチーでパワーのあるメロディに多くの人が勇気づけられた。
その数年後、メンバーの地元である広島県尾道市で開催されたライブ「しまなみロマンスポルノ'18〜Deep Breath〜」も同年に発生した豪雨災害の復興支援の側面が大きくなったことで「ワンモアタイム」が勇気をくれた。

One more time 僕らは信じてる
心と心が繋がった時に
きっと新しい明日の風が吹き
背中を押してくれる
ネガティブな気持ちを少しでもポジティブにと背中を押してくれるポルノが奏でる「ワンモアタイム」に、この日もまた救われた。
そして次に演奏される楽曲は、私がこれまでポルノを聴いてきた中でも思い出深い、とても重要な一曲。
- 2012Spark
基本的に数年空けて開催される「ロマンスポルノ」が一年に2度行われたことがある。
つま恋から数か月後、日本全国に恐怖と悲しみが広がった2011年ももうすぐ終わろうとしている12月に開催された「幕張ロマンスポルノ'11〜DAYS OF WONDER〜」で初披露された「2012Spark」は、2012年という復興に向けて一番頑張らなければならない年を切り取り、あえて年号をタイトルに付けたシングルだった。
今でも初聴きの衝撃は忘れられない。これまでにないスリリングなナンバーはポルノを好きな気持ちをまた一段階上げてくれた。そして同時に、この楽曲をこのタイトルでリリースする彼ららしさもたまらない。
今回ファンの予想通り「2012」を「2020」に変更して歌唱した昭仁だが、おそらく「2020」を意識し過ぎたせいか歌詞を間違えるトラブルもあった。これもポルノらしさで、大好きなバンドが帰ってきてくれた感じがする。冒頭で晴一が急いでチューニングする姿が映るなど、ハプニングもあったが、「2020Spark」のメッセージは参加した全てのファンの心に突き刺さったことは間違いないと思う。
久しぶりの楽曲披露も多い本日、次に演奏されたのは1stアルバムから
- リビドー
ポルノのポルノな部分を前面に出した歌詞が印象的なロックナンバーである「リビドー」のような楽曲を常にファンは求め続けている。ポルノは少しダークでエロティックでそして激しいナンバーがもっとあっても良いと思う。
久しぶりに聴いた「リビドー」はやっぱり色あせていない名曲の一つだった。
そして昭仁の首筋ショットは全ファン保存必須のお宝画像だろう。本当にごちそうさまでした。おかわりお願いします。
激しいナンバーが続いていたが、次はバラードゾーンへ。しかし、昭仁はバラードにも圧倒的な熱量を込めることが出来る。
- ヴォイス
「ヴォイス」のイントロが流れると、意外だと思った。披露する頻度が少ないシングルの代表格のような存在で、国内では昨年の神VS神で久々に演奏された。その際はメドレーの中の一部であったのでフルで聴きたいという声が多かった為か、今回フル尺での演奏となった。
いざ聴くと、今の状況と重なる部分も多い。個人的に昭仁はこのくらいのテンポのバラードが一番映えると思っている。近年の歌唱力の向上もあって配信で聴いていても胸の奥まで響いてくるのがわかる。
昭仁が「左胸の声を聞け」と熱唱しながら胸を掴んでいた所であやうく失神しかけた。
ポルノはラテン曲やアップテンポな夏うたが人気のイメージだが、やはりバラードが良いと改めて痛感させられた。
ここでMC。
チャットを確認しながらトークをする姿は、ラブシェを思い出す。

ライブに集中したかった為、チャットを非表示で再生していたが
- セトリがすごすぎる。
- 本当に生きてて良かった。
- 涙で画面が見えんのです。
など、自分の想っていることをちゃんとみんなが代弁してくれていた。この日本、いや世界中で同じものを好きな人たちが、同じように感動しているんだ。
トークは昭仁と晴一がポルノ休止中に何をしていたかについて。これに関しては非常に的確かつ、面白く書かれたネットニュースがあった。
前回のライブから約1年3カ月経過するが、新藤はロンドンに留学していたと明かした。岡野も、ロサンゼルスにボイストレーニングに行こうとしたが、新型コロナの影響で白紙になり、カブトムシを育てているという。
引用:日刊スポーツ
意味不明で、ボーボボを読んでいるようだが、まさに記事の通り。カブトムシのカブタくんジュニアたちが引くほどいるらしい。
相変わらずのゆるいトークから現在の状況に関する真剣な話へ。
去年のドームを終えてゆっくりする期間に入ったが、あのドームの光景が忘れられずまたファンに何かを見せられないか考えていた中、コロナ禍となったことで
簡単には、あの光景には戻れないんだ
そういうことってあるんだ
そう感じたという晴一。だからこそ今日、この場所に立ってライブをしていることが特別だと思ったという。
それは私たちも同じで、チケットサイトを開けば当たり前のようにいろんなアーティストがライブを開催していて、エンターテイメントは目の前にあった。
もちろん当選するかは別だが、いつでもなにか楽しいことに触れることが出来た。しかし、今は違う。ポルノにとっても、私たちにとっても特別な時間。
こうしてまた再会できたREUNION。
ポルノにとって懐かしい会場で、懐かしい曲にREUNIONした。
- シスター
待ち望んでいた「シスター」がついに演奏された。ふたりでもう一度前に進もうと決心をしたときにリリースした思い出の曲。
モニターにはPVを模した木の映像が映し出される。
再びREUNIONしたポルノ。もしかすると、20年で区切りをつけソロ活動をする可能性だってあったかもしれない。
今、こうやってポルノを見ることが出来ていることはもしかすると奇跡かもしれない。
立ち止まらず前に進んでくれたおかげで、今日彼らの音楽に救われている私たちがいる。誠実に、たった一つの音にある真実を追いかけてきた二人が張り巡らせた根が、たくさんのファンそしてミュージシャンたちと繋がっている。
別れがあるから、出会いもある。
「シスター」の最後、モニターの映像はまるで再生していた映像を切るかのように止まった。ポルノにとって大切な一曲にもう一度再会し、そして歩き出した。
今回のライブの中で個人的にベストプレイだと思った楽曲がある。
- ルーズ
ファン人気が高いこの曲を選んだのは、当面ファンクラブツアーの開催が難しい状況を考え、ファンに向けたプレゼントの一つだろう。
晴一の描く小説のような世界がポルノの大きな魅力。本当に大好きな一曲が選ばれて嬉しかった。
そしてサビの映像の美しさは過去のポルノのライブでも指折りだと思う。
美しい光が広がっていく様子は、最高のホールツアーの呼び声高い「BUTTERFLY EFFECT」の一曲目だった「夜間飛行」を彷彿とさせる。
配信でも心から震えた。本当に会場で見たかったと、この時ばかりは思ってしまった。
晴一らしい世界観はまだ終わらない。
- カメレオン・レンズ
「カメレオン・レンズ」は、晴一らしい作詞と、イントロから打ち込みがクセになり「Zombies are standing out」と同様に近年の楽曲のなかで人気が高い。神VS神ではセトリに入らなかったので、最近ファンになった方は今回の披露に歓喜したのではないだろうか。
1番終りから2番までの間に水分補給に行った昭仁だったが、行ったタイミングがかなりギリギリで、絶対間に合わないだろうと思ったらギリギリセーフだった。
次に演奏された楽曲は、もうやることはないだろうと思っていたカップリング曲だった。
- 海月
20周年アリーナツアー「UNFADED」にて美しい映像美でファンを魅了した「海月」だったが、いわゆるマイナー枠に入るポジションであることを考えるとライブで今後披露されることはないと思っていた。
しかし、今回のライブで披露された「海月」はまさにこのライブの為にあったのかもしれないと思わされるほど歌詞が響いた。コロナ禍での心境の変化、久々のライブ、現在の状況、すべてが影響して今回のライブでは全ての楽曲がこれまでとは違った印象に聴こえる。
この世界に鳴り響いてる
そのほとんどの音が邪魔で
そんな時も聴いていたのは
キミの声だけだったよ
耳の病気を抱えていることで、いつも耳に流れる不快な音をかき消してくれるのがポルノの音楽。コロナ禍は大切なものを再認識させてくれる時間でもあった。
美しい映像美に酔いしれる。さきほどのルーズとは真逆で、海月は配信で繋がっているファンに向けた演出が光っていた。
聴き入るタイプのレア曲コーナーを過ぎるとMCへ。
チャットを確認した昭仁は
「誰だよ、イシダイ釣ったのは」
・・・イシダイが出てたの?
彼は、今日の自分の衣装がイシダイカラーということに気付いていないようだった。幻想的な海月の映像真ん中でイシダイが輝いている映像を見れたのは私たちだけだ。
晴一は今回のライブを受けて、「時代は進んだと感じた」と話す。改めてライブをしている現状を貴重だとして、今日思い出したことはいつも手を振ったり、声を出してメンバーを呼んだりする表現の方法があるが
我々は拍手にも魂を込めれるっていうことを再認識したね。
その言葉を合図に、新サポメン玉田さんがドラムで名曲の始まりを告げる。
これぞポルノの代表曲、名刺代わりの
- アゲハ蝶
すぐに会場からお決まりの手拍子が始まる。1年3か月ぶりだが、体に染みついているのがわかるほどきれいに揃う。もちろん、配信で観ているファンも同じ。
モニターには一羽のアゲハ蝶が映し出された。曲が進むにつれ、そのアゲハ蝶は増えていく。
会場の皆さんはシンプルな魂の手拍子を続けて下さい。歌えない代わりにサポートメンバーがめっちゃ歌います。配信の向こうのみんなはどんなにデカい声を出してもいいぞ
モニターには地球が映し出され、やがて日本に。画面にはTwitterで応募した全国のみんなのメッセージ、アイコンが表示されていく。
残念ながら自分のものは見つけることが出来なかったが、Twitterで繋がっている方のアイコンなどが目に入ると嬉しくなった。
Twitterで繋がっているあの人も、どこかで同じものを見ている。
モニターに表示されているメッセージが一つずつ消え、アゲハ蝶に変わる。無数のアゲハ蝶は会場であるLINE CUBE SHIBUYAへ集まってゆく。
被災地に想いを届けようと歌ったあの日のアゲハ蝶も、満員のドームで祝福の想いが一つになったあの日のアゲハ蝶も素敵だった。
これまで何度も聴いてきた「アゲハ蝶」だが、今回ARを駆使し、会場内を無数のアゲハ蝶が飛び回る中で演奏されるアゲハ蝶はかつてないほどに感動的なものだった。
会場が見えなくなるほどにアゲハ蝶で埋め尽くされていたが、それほど今回のライブに対するみんなの想いはたくさんある。
あなたに逢えた それだけでよかった
世界に光が満ちた
次の曲は、もはや冬の定番となったこの曲
- Hard Days, Holy Night
安心感がある定番のナンバーを選曲するあたりポルノらしい。「ゆきのいろ」や、「クリスマスのHide&Seek」の登場が少ないのは寂しいが、今年はコロナ禍ということもあり例年通りのクリスマスを過ごすことが出来ない人も多いと思うのでファンみんなで一足早いクリスマスを過ごせてよかった。
ライブも終わりが見えてきたことが、次に皆川さんが奏でるイントロで感じた。
- VS
神VS神の為にあった曲のイメージが付いてしまっているが、もしかするとこれからのライブの主力メンバーに入るかもしれないパワーを秘めている一曲。
9月8日に「オンラインで向かい合おう」と宣言し配信されたライブ告知動画内で、先行リハ映像として公開された「VS」は、あの日を思い出してしまい涙が出る。
全国からポルノを祝うために6万人近い人数が集まったあの日。再びあんなライブが出来る日がくるのだろうかという不安もあるが、一日でも早く日常が戻ることを願う気持ちが込められた演奏だった。
そうか あの日の僕は今日を見ていたのかな
こんなにも晴れわたってる
バーサス 同じ空の下で向かいあおう
あの少年よ こっちも戦ってんだよ
あの日とはまた違う意味合いで、満員の会場でこの曲が聴ける日を、いつか。
ここでMCが入る。
昭仁は、1年3か月ぶりの活動で普通ならポルノを見放してもいい中、こうしてライブに来てくれたり配信を見てくれている事への感謝を語る。
この1年3か月、いろんなことを見たり感じたりするなかでもキミらの声は届いていたから贅沢な時間を過ごさせてもらった。
ポルノの歯車をグググッと動かしてくれるのは君らなんよ。そして遠くまで運んでくれるのもやっぱり君らです。
これからも君たちとまだまだ遠くに行ってみたいからこれからもよろしくね
明確にこれからもポルノが存在し続けることを口にしてくれたことが本当に嬉しい。事前のインタビューでも晴一が「まだ見せれるものはあるな」と語っていたが、二人の気持ちが同じ方向を向いていることがなによりも嬉しい。
強い意志を示した後、二人のハモリで始まったライブの定番曲
- ハネウマライダー
まさかハネウマで泣かされる日が来るとは思わなかった。ポルノというBig Machineに乗せてもらい続け、東京ドームという目的地に到着し、1年3か月。この先の道があるのかわからないままの状況だったが、旅には続きがあった。まだ物語は終わっていなかった。
他の誰かと、いや
この時間を共有しているお前らと
エアータオルを回すファンの姿を見ると、ドームでタオルを回していた時を思い出す。あの日も最高に楽しかったし、今日も楽しい。これからも今まで以上に楽しい姿を見ることができる希望にあふれる。
この楽しい時間も次で本編最後となった。
ついに演奏された。20周年でリリースされた「VS」のカップリングで、ファンへの感謝を込めたバラード。
- 一雫
メンバーの足下には、雫が落ちる様子が浮かび上がる。
今日も駆け抜けていくよ Winding path
まだ見ぬ明日に続けよ
その羽を大きく広げたままで
この旅路の果てで待ってて
ポルノが進む旅路の果ては、20年のドームでは無かった。これから先、どんな旅路が待っているだろうか。
どこまででもいい。ずっと着いていくから、出来るだけ長く出来るだけ遠くまで。
ポルノコールが出来ない為、アンコールは手拍子だった。そして全然休憩せず、本当に一瞬で再登場する。いつものようにポルTに着替えることもなかった。
まだ息も荒い昭仁が再び歌を届けてくれようとしている。
ネガティブばかりをとらえていても仕方がないんですが、夢を追う気持ちが緩んでしまったとか、なかなか上手いこといかない気持ちが生まれてしまったかもしれない。
でも今日の再会で、また力強い一歩が踏み出せたらいいじゃんか。
そう語り、待ってくれたみんなに恩返しのためにと新曲の披露を宣言した。
新しく一歩を踏み出すために、ポルノも一歩踏み出す姿を見せようとしてくれている。
- REUNION
一音一音が重いピアノの音が響きわたる。「カシオペアの後悔」のようなイントロから力強さを感じるメロディ。
目を閉じて 刮目し
目を開けて 瞑想せよ
風のように 淀みなく
流れるものを留めるな
後日のラジオで作曲は昭仁、作詞は共作であることが明かされた。(サビは昭仁作詞、それ以外を晴一が担当)
そしてサビはオープニングSEで流れていたあの部分だった。
REUNION NOW REUNION START
REUNION WORLD REUNION HERE
REUNION PRIDE REUNION BRAVE
REUNION STRENGTH REUNION FAITH
今回のライブタイトルでもあるREUNION(再会)を盛り込んだサビ。今日をきっかけにまた歩き出し、そしてまだ再会出来ていないものに会いに行きたくなる。
ポルノ成分が枯渇し、新しいポルノを求めていた私たちに向けて、一歩前へ進めるような強いメッセージが込められた新曲をありがとう。
ラスト一曲を前にメンバー紹介。
今回は新サポメンである玉田さん、山口さんはひたすら演奏に徹していた為、トークなどは無かったが素晴らしい演奏だった。また二人にREUNIONしたい。
そして、今回ステージ上に必ずいる仲間がいなかった。
- nang-chang
ポルノを最初から支え続けてくれた功労者。これまでたくさんのサポートメンバーが入れ替わってきたがnang-changだけは不動だと思っていた。
インスタに表舞台から離れるというメッセージがあったことでファンの間にも動揺があった。ポルノが新しく進むうえで変化は必要だと思うが、正直まだ受け入れることが出来ない自分もいる。
ただ一つ、感謝だけは伝えたいと思った。本当にポルノのライブが楽しかったのはnang-changのおかげだし、これからもポルノを支えて欲しい。
nang-changありがとう。
あなたがいたから、ポルノのステージはより楽しいものになっていました。
これからもずっとポルノを支えてくれるなら安心です。でも、30周年のドームではステージに立ってくれるんですよね?
あの時ドームにいた満員のファンがみんな、その約束を信じて待ってますよ。— aki@幸せについて少しずつ考えてみた (@aki54446340) December 5, 2020
30周年のドームで待ってます。
サポメン紹介後に、ポルノ二人の最後のMCが始まった。
会いたいと思えばどうやってでも会える。
こうやって(現地で)でもそうだし、配信でもそうだし。この先も、お互いに会いたいと思えばどっかで会えるはずだからコロナに負けずにやりぬいてやりましょう。
晴一はまた会えるという事を強調してくれた。
昭仁は、まず今日の日を作り上げてくれたスタッフへの感謝を伝え、賛辞の拍手を求めた。昭仁らしい。
これから新しいものを作っていく中で、わしらはホームがあってよかった。
今日見てくれているみんながわしらのホームを作ってくれている。
ポルノは私たちにとってもホームだ。そこにいてくれるだけで安心感に満ちあふれる。
そして今日聞いた中で一番といっても良いセリフで締めてくれた。
ポルノグラフィティ、全盛期はこれからです。
こんなに嬉しい言葉があるだろうか。ポルノを追いかけ続けているファンは今が全盛期だと感じている人が多い。私も今のポルノは覚醒していると感じている。
しかし、それ以上のものをこれから見ることが出来るらしい。本当に、恐ろしいバンドを好きになってしまった。
そして次に演奏されるのがこの日のラストナンバー。帰ってきた、あの曲を。
ラスト一曲
- ジレンマ

正直、今回のライブが「ジレンマ」であることを願っていた。その願いが叶ったことが嬉しかったし、何度も何度も聴いた曲の安心感が全てを包んでくれる。
横にいる妻が「ただひたすらライブに行きたい」と嘆いている。
アホになりたい。会場で両手をあげ、飛び跳ねているファンを見ると、ポルノのライブが帰ってきた嬉しさ、会場にいられない悔しさ、けれどオンラインでみんなが繋がっている嬉しさすべてを感じる。
ポルノのライブはやっぱり最高だ。
演奏を終え、サポメンが舞台から去っていく。いつものようにハイタッチや力強いハグで健闘を称えることが出来ない状況が寂しい。
そしてステージ上にはポルノ二人。
晴一、昭仁の順で最後の生声を叫ぶ。
今日は本当に会えて嬉しかったです。
ありがとう。
おんなじこと言う。
ほんまに会えて嬉しかった。
また会おう。
久しぶりに揃った二人が、同じ気持ちで前を向き、そして進んでいく姿を見せてもらったら、私たちも同じ場所にいるわけにはいかない。
一歩ずつ、力強く進みたい。
ファンクラブ限定ライブ後配信
ライブ後は、ライブ前配信で登場した謎の人物がスマホをいじりながら会場を後にし、関係者専用の通路へ進む様子が映し出された。
途中置かれているライブグッズを無言で紹介しながら最終的に楽屋までやってきた。
出迎えるサポメン及び晴一。
最高だったよ!
晴一からそう言われたあと、カメラが撮影者を映した。
撮影者は僕でしたー!
どこで入れ替わったのか、昭仁だった。
客席にいたあの人物はnang-chang?スタッフ?謎を残すまま、昭仁と晴一が写真撮影をし、舞台裏映像は終了した。
最後の最後まで楽しませてくれるポルノ。
これからどんな方法で私たちを楽しませてくれるのだろう。まずはポルノが100%の力を発揮できるようにこの状況が一日でも早く落ち着いて欲しい。
まとめ
1年3か月待ち続けたライブは、忘れることの出来ない夢のような時間だった。
神VS神とは違う意味合いで感動したし、この先「忘れられないライブは?」と聞かれたらこのライブも間違いなく挙げるだろう。
コロナ禍の中、11月に初めてKingGnuのライブに行った。久々の生音に心から感動したあとのポルノの配信だったので、もしかすると物足りなく感じてしまうのではないかという不安がほんの少しあったのが正直なところだった。
しかし、そんな心配をしていた自分がバカだった。小さい頃からずっと大好きで、ずっと待ち続けていたバンドのライブは、たとえ画面の向こうでも最高の時間だった。
むしろ配信であったことでよりたくさんの人が感動でき、明日への一歩を踏み出す勇気が与えられたのではないだろうか。
ライブ終演後に流れたエンドロールでは沢山のファンのツイートが流れた。残念ながら自分のツイートは見つけることは出来なかったが、ツイートを探すために何度も何度も一時停止して皆のツイートを読んでいると涙が出てきた。自分と同じようにポルノが大好きで、この日を待っていた人がこんなにも沢山いた。
アカウント名だけは発見することが出来たので、自分もこのライブに参加した証として大切に残しておこうと思う。
今年はこれまでにないネガティブな気持ちを抱え、不安な時間を多く過ごした年だった。そんな2020年ももうすぐ終わろうとしている。
2020年12月4日、この日をずっと忘れない。
2020年は、この日の為にあった。
今日からまた力強い一歩を踏み出そう。
また再び満員の会場で大好きなポルノとREUNIONする日を夢見て。
コメント